土壌の豊かさは命の豊かさ
私たちは身近にある自然をあまりにも「当たり前」のものと感じ、その価値を見ようとしていないように感じる。木々の梢は空を指し、足元の草や落ち葉は大地があることを教えてくれる。その足元の「土」が、緊急SOSを発している。国連食糧農業機関(FAO)によると、食料生産に重要な地球上の土壌の33%以上がすでに劣化しており、2050年までに90%以上の土壌が劣化する可能性があるという。
土壌学者の藤井一至氏は、「土と生命は人間が作れない」と述べている。土が存在していることは、実は当たり前ではない。1cmの厚みの土がつくられるのに100~1000年かかるという。土は食料を生み出し命を育む。そして、土は生物の死骸から新たな土を作り出す。まさに悠久の年月をかけての命の循環である。土は生態系そのものであり、土壌の健康=植物の健康=人間の健康であり、地球の生命サイクルにおいて重要な要素であるという認識が大切だ。
しかし、人間は土を耕すことにより、さらに風や雨の浸食風化により1cmの厚みの土を10年で失くすこともあるという。人類は土壌がさも無尽蔵であるかのように、「豊かさと成長」を目指して、土から搾取し環境破壊を繰り返してきた。
気候変動⇒気候危機⇒地球沸騰(国連グテーレス事務総長)と危機が加速していることを、私たちはまさに肌感覚で体験している。実は、世界の温室効果ガス排出量の1/4は農林業が占めている。特に南北アメリカ・オーストラリアなどでは大規模工業型農業で、広大な面積を利用し大量に農作物を栽培しているが、農地を巨大なトラクターで耕作し化学肥料と農薬を投入することによる土壌劣化と環境汚染が問題視されている。機械化の進展、作業の高効率高生産のために単一栽培で大量生産することで、本来土中に貯留する炭素量が減り、温暖化を加速させている。日本は、農地面積や農業生産額の4割を「中山間地域(里山)」が占めているので、日本の国土環境には大規模工業型農業はそぐわないと思う。
大気中のCO2を吸収・固定し、炭素を土中に貯留することが、気候変動対策の鍵になると言われている。地域の自然資源を保全・再生する農業の在り方、自然農(不耕起・無農薬・無化学肥料)や環境再生型農業が、地球環境再生と気候変動対策に貢献できるのではないかと世界中の研究者や実践者等から注目されている。
全ての生き物にとってよいことは、地球にとってもよいことであり、それは私たち人類にとってもよいことだ。「地球は私たちのコモンズ(共有地)」だ。命を生み育む地球のケアは待ったなしだ。
Save Our Planet!!「私たちの地球を救おう!!」 気仙沼の森と海を守る会 松本 まり子
