「地域共生とは何か」投稿が三陸新報に掲載されました
2025年12月6日(土)三陸新報に当会代表の投稿が掲載されました。
11月20日、市民の森に風力発電所を計画している事業者(東急不動産)から、あるチラシが計画地近隣住民に唐突にポスティングされた。そのチラシを見た住民が不審と不安を感じ、当会に問い合わせをしてきた。チラシは、12月1日より計画地10箇所の地質ボーリング調査をするという告知であったが、①調査地点が全く示されていない、②「計画地の地中の状態を把握する目的」とだけ書いてあり、そもそも何のための地質調査?かの意図がわからない、③どれだけの規模の自然を改変するのかが不明と、不審感を抱かせるチラシであった。
東急不動産の風発計画に対しては、近隣自治会等の反対決議→反対署名→要望書提出→「市民の理解と賛同が絶対条件」という請願が全会一致で議会採択という経緯があった。そして環境アセスメント第3段階の準備書が10月15日に環境影響評価技術審査会で審議された。そのような時期にボーリング調査の実施が一方的に告知された。計画による生活環境や健康への影響と被害を心配している計画地周辺の住民にとっては、このような不親切な告知のやり方は、住民の理解と賛同を得るどころか、むしろ事業者への不信を増幅させ、センシティブな住民感情を逆撫ですることとなっている。
「再生可能エネルギー(以後再エネ)の導入においては地域との共生が大前提であり極めて重要」(エネルギー基本計画令和7年)と言われる。そもそも地域共生とは何だろうか?
事業者から見た地域共生は、再エネ事業と市民生活や地元産業との共生(両立)であり、再エネ開発ありきの視点からの共生である。つまり、「巨大風発は脱炭素に貢献し気候変動対策になるので推進するべき公益事業だ」というのが事業者の論理前提である。だから事業に対しての住民の理解と賛同が必要であり、そのために有意義で安全安心な事業だと、いかに住民に理解させるかが主眼になっている。
しかし、市民・住民にとっての地域共生は、「自然と人と社会の共生」である。その共生を可能にするものは、生活環境と健康および豊かな自然資産、持続的な社会・文化・産業を維持し創造することである。共生は、「共に生きる」「いのちを共にする」を意味するギリシャ語に由来するという。仏教においても「共生(ともいき)」という考え方がある。すべてのいのちの連綿とした繋がりを大切にするということだ。住民にとって、巨大風発といのちを共にする生き方は無論できない。地域共生とはなにか?地域共生を考える時、誰がどんな動機と目的で地域共生と発しているのか、本来の意味を深く考える必要があると思う。
以上のように、事業者と市民・住民では、共生というキーワードの捉え方に根本的隔たりがある。事業者が調査結果で、いかに「安全な事業」だと説得しようとしても、大企業に利益をもたらす巨大建造物は、市民の森に必要ないという市民・住民の意思は揺るがないと思う。
私たちが求めているのは、自然と人と社会との共生を成立させるあり方である。昨今の熊出没問題や山火事などの災害を通して、自然は人類に警告を発している。その警告にどのように応えるべきかを、私たちは問われている。自分だけの利益や快適を求めるこれまでの生き方・価値観が根元から変わるべき時期に来ている。「人は自然の一部であり、自然は大いなる教師である。」自然と人のいのち、すべてのいのちが、つながり合い支え合って生かされている、共生という言葉の重みを深く感じたい。現在当会では、「市民の森のガイドマップ(ブック)」の制作を計画している。先人の想いと共に、人と自然との触れ合いの場として市民の森が「みんなの森」になることを願いつつ、活動を続けている。
気仙沼の森と海を守る会代表 松本まり子


