「未来へ残そう市民の森」イベントを開催しました
5月17日やすらぎにて「未来へ残そう市民の森」のイベントを開催しました。雨の中にもかかわらず、約60人が参加してくださり、とても有意義な会となりました。





初めに、森と海を守る会の代表が、市民の森での大規模風力発電所計画の経緯と問題点、今回準備書の概要、森海会の署名や要望書提出の活動等について説明しました。
第1部では、南三陸ワシタカ研究会事務局の鈴木卓也さんが「市民の森の来歴を掘り起こす」と題して、地図スライドを見せながら講話。神山川や面瀬川など市内を流れる主要な川の源流が羽田山であり、大切な水源の山。円錐形で良く目立つ室根山が気仙沼から眺められる男性的な「父なる山」とすれば、それと対をなす、なだらかでどっしりとした羽田山が「女神山」のイメージ。
古文書から辿ると、羽田さんの西部丘陵地域は、1642年の江戸(寛永)時代の頃にはすでに山麓の4つの村の入会地として記録されており、その後もさまざま変遷ありつつも協働利用の入会地(共有地)として管理利用されてきた。
昭和46年に、105haの森林が宮城県と気仙沼市によって「気仙沼 市民の森」として定められ、遊歩道、休憩所、駐車場、子どもの国などが整備された。市民の森は、さらに平成元年、人と自然のふれ合いの場として「①心身の保養リフレッシュ ②森林文化の学習 ③人と自然、人と人の喜びの輪」の目的が定められ、年間6000人~12000人が市民の森を訪れた。これらの目的は、むしろ現代に必要とされる魅力と機能であること、市民に愛され活用されてきた市民の森の来歴と先人たちの想い、市民の森の今日的価値について話されました。
そして鈴木さんが南三陸での取り組み、地域住民やボランティアによる旧火防線などの尾根道を刈り払い、動植物の生息環境を確保、地域の生物多様性を高める取り組みを紹介する動画を視聴しました。
第2部では、パタゴニア日本支社ブラントインパクト、公益財団法人 日本自然保護協会理事の篠健司さんが「ふるさとの自然をどう生かすか~生態系サービスの視点から」と題して、鈴木さんとのトークセッション。パタゴニアの企業理念「地球が私たちの唯一の株主」のために会社組織とビジネスそのものを変えてきた歴史、会社を維持する必要経費を差し引いた全利益を環境保護と環境活動への支援に充ててきたこと、社是の「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」ために、事業と環境保護と一体化させてきた取り組みなどについて紹介されました。
https://www.patagonia.jp/activism
イベント前に気仙沼の市民の森や徳仙丈を歩き走ってこられた篠さん(ご自身がトレイルランナー)は「気仙沼は、美しい森、田んぼ、川、海、子どもの笑顔があって、すばらしい所ですね」。今年4月に公開された「宮城県生物多様性地域戦略」から引用しながら、生態系サービスの概要、生活やビジネスは生態系サービスの恩恵なしには成り立たない。ネイチャーポジティブ(自然復興)や生物多様性の大切さを理解し、自然と共に生きるライフスタイルをつくってゆくことの重要性を説明されました。
ここから鈴木さんとのトークセッション。4種の主要な生態系サービス「供給」「調整」「文化」「基盤」について、気仙沼と市民の森ではどんなサービスが提供されているか、鈴木さんや会場からの市民の声などをお聞きしました。
「供給」歴史的には萱刈りの入会地としての森林、木材、「日本一おいしいお米」受賞米、おいしいお米を生み出す上質な水、スローフードシティ文化、水産業の土台
「調整」空気の清浄さと静けさ、保安林、日本でも希少ない干害防備保安林、神山川・大川・津谷川の源流であり水源、きれいな水を生み出す市民の森の力
「文化」天然記念物太郎坊次郎坊のある由緒ある羽田神社とお山がけ、元々入会地として奪い合いせず共有できてきたのは「山の神」「森からの恵みは、神様からの恵み」という信仰とモラルを育んできたおかげ、野外レクリエーションの可能性、マウンテンバイクの道が整備されている貴重な森、散策やランニングに適した「優しい土」であること(ランナー篠さんの実感)、老若男女誰でも利用できる・市民がすぐに楽しめる、とても恵まれた森林
開発によって壊されていない豊かな自然とふれ合う経験は、高齢者の認知症予防や、青少年の精神的自立を育むなどの医学的効果も実証されている。
誰もがみんな近づけ・利用できる「自然アクセス権」を保証してゆくことが、これからの時代とても大切になってくることを強調されました。
会場の市民からは、子どもの頃の市民の森への遠足、家族で森の散歩に行った想い出、山歩きをして市民の森の動植物の多様性(調べたらなんと886種!)に感動した経験、トレイルランが好きで市民の森は小さなアップダウンがあり走りやすく楽しい森、少しずつ整美していって60kmくらいのトレイルコースをつくり走破したい夢がある、市民の森散歩案内パンフレットが作られていないのは残念、医療従事の立場から子供から大人まで自然と関わることの大切さ、などの話がありました。
あらためて市民の森の価値、ありがたさ、尊さに気づき・思い出させてくださるトークに、皆拍手で締めとなりました。
最後に、森海会代表が、市民の森はみんなの共有財産、「市民の森条例を制定しませんか」と行動提起すると満場の拍手で賛同が示されました。
また今回のイベントでも、高前田乾隆窯の陶芸家 斎藤乾一さんが、自作の作品を特価で販売し、売り上げ全額を会の活動に全額寄付をしてくださいました。